砂占い16の図形で答えを導く
砂に印を付けて4段の図形をつくり、16種類の図形から答えを導くアラブ世界の占い。ヨーロッパやアフリカにも広まりました。
発祥:アラブ世界中世〜カード等を引く体験できる
砂占いで占う
ひとつの問いを決めて砂に印をつけると、16の図形から答えの図形(判事)が導かれ、AIが問いに合わせて読み解きます。
概要
砂占いは、砂の上に点や線を記し、そこから生まれる図形で答えを読む占いです。アラビア語では「イルム・アッ=ラムル(砂の学問)」と呼ばれます。中世にヨーロッパへ伝わると、ラテン語で「ジオマンシー(大地の占い)」と呼ばれるようになりました。
使う図形は、点1つまたは2つを4段に重ねたものです。組み合わせは2の4乗で、全部で16種類あります。占う人は、偶然に生まれた図形を決まった手順で組み合わせ、最後に答えとなる図形を導きます。道具は砂や紙とペンだけで済むため、身近な占いとして長く親しまれてきました。
由来と歴史
アラブ世界での始まり
砂占いがいつ、どこで生まれたのかは、はっきりしていません。伝説では、預言者イドリース(聖書のエノクと同一視される人物)が、夢の中で天使ジブリールから教わったと語られます。もちろん、これは歴史的な事実ではなく、占いの権威を示すための物語です。
研究の上では、アラビア語の世界で体系化された占いと考えられています。イスラームの教えの中には、こうした占いを戒める言葉もあります。それでも砂占いは、学者から庶民まで広く親しまれました。大英博物館には、1241〜42年にシリアで作られた砂占い用の金属製の器具が残っています。回転する円盤で点の組み合わせを出す、手の込んだ道具です。
ヨーロッパへの伝来
砂占いは、12世紀ごろにスペインでアラビア語からラテン語に訳され、ヨーロッパに伝わりました。サンタリャのフーゴという人物が訳した書物は、ラテン語で書かれた最も古いジオマンシーの手引きの一つとされます。
ヨーロッパでは、16の図形が惑星や星座と結びつけられ、西洋占星術と組み合わせた読み方も発達しました。一方で、キリスト教の世界では「禁じられた技」の一つに数えられ、批判されることもありました。それでもルネサンス期まで多くの手引き書が書かれ、19世紀以降は西洋の神秘主義の団体にも取り入れられました。
アフリカへの広がり
砂占いは、交易の道を通ってアフリカ各地にも広まったと考えられています。マダガスカルのシキディは、種を並べて16種類の図形をつくる占いで、砂占いの流れをくむとされます。
西アフリカのヨルバの人々に伝わるイファも、16の基本の形を使う点でよく似ています。ただし、イファが砂占いから生まれたのか、それとも独自に発達したのかについては、研究者のあいだでも意見が分かれています。
16の図形
16の図形には、それぞれラテン語の名前と意味があります。下の表の「形」は、図形の上の段から順に、点がいくつ並ぶかを示しています。
| ラテン語名 | 意味 | 形(上から) |
|---|---|---|
| ウィア | 道 | 1・1・1・1 |
| ポプルス | 民衆 | 2・2・2・2 |
| コンユンクティオ | 結びつき | 2・1・1・2 |
| カルケル | 牢獄 | 1・2・2・1 |
| フォルトゥナ・マヨル | 大きな幸運 | 2・2・1・1 |
| フォルトゥナ・ミノル | 小さな幸運 | 1・1・2・2 |
| アクイシティオ | 獲得 | 2・1・2・1 |
| アミッシオ | 喪失 | 1・2・1・2 |
| ラエティティア | 喜び | 1・2・2・2 |
| トリスティティア | 悲しみ | 2・2・2・1 |
| プエラ | 少女 | 1・2・1・1 |
| プエル | 少年 | 1・1・2・1 |
| アルブス | 白 | 2・2・1・2 |
| ルベウス | 赤 | 2・1・2・2 |
| カプト・ドラコニス | 竜の頭 | 2・1・1・1 |
| カウダ・ドラコニス | 竜の尾 | 1・1・1・2 |
「竜の頭」と「竜の尾」は、月の通り道と太陽の通り道が交わる2つの点を指す、占星術の言葉です。名前は同じ意味でも、良い悪いの読み方は問いによって変わります。たとえば「喪失」は、失せ物の問いでは悪い答えですが、悩みを手放したいという問いでは良い答えとも読めます。
盾形の配置と占い方
ヨーロッパのジオマンシーでは、15の図形を盾のような形に並べる「盾形の配置」がよく使われます。手順は次のとおりです。
1. 母をつくる
まず、占いたいことを一つ決めて心を落ち着けます。次に、数えずに点や線を勢いよく記し、1列をつくります。その数が奇数なら点1つ、偶数なら点2つとします。これを4回くり返すと、4段の図形が一つできます。同じことを4回行い、4つの図形をつくります。これが「母」です。
2. 娘をつくる
4つの母の、いちばん上の段だけを順に取り出して並べると、新しい図形ができます。これが1番目の「娘」です。2段目、3段目、4段目からも同じように取り出し、4つの娘をつくります。
3. 姪・証人・判事をつくる
次に、図形どうしを足し合わせます。同じ段の点を足し、合計が偶数なら点2つ、奇数なら点1つとします。1番目と2番目の母、3番目と4番目の母、同じように娘どうしを足して、4つの「姪」ができます。
姪を2つずつ足すと、2つの「証人」ができます。最後に2つの証人を足すと、答えとなる「判事」が生まれます。答えがはっきりしないときは、判事と1番目の母を足して「調停者」をつくる読み方もあります。
4. 読み解く
判事は、問いへの答えそのものを表します。2人の証人は、答えに至るまでの事情や流れを示すとされます。
おもしろいことに、判事になれる図形は16のうち8つだけです。この手順では、判事の点の合計が必ず偶数になるからです。たとえば「民衆」や「道」は判事になれますが、「喜び」や「悲しみ」は判事になりません。昔の占い手は、この性質を使って計算の誤りを確かめたといわれます。
また、図形を占星術の12の「家」に割り当て、恋愛や仕事など分野ごとに読む方法もあります。アラブ世界の伝統では、図形の並べ方や名前、読み方に、ヨーロッパとは違うところがあります。
よくある誤解
「ジオマンシー」は風水のこと?
英語の「geomancy」は、中国の風水や、大地の「気の流れ」を読む考え方を指して使われることもあります。しかし、もともとのジオマンシーは、このページで紹介した16の図形の占いです。名前は似ていても、別のものだと考えてください。
判事の図形で未来が決まる?
判事の図形が、未来を言い当てるという科学的な根拠はありません。悪い意味の図形が出ても、何かが決まってしまうわけではないので安心してください。結果は、自分の気持ちや状況を見つめ直すきっかけとして楽しむのがおすすめです。
このサイトでの体験
占いたいことを1つ決めて「砂に印をつける」と、4つの図形(母)が生まれ、そこから娘・姪・証人を経て、答えとなる「判事」の図形が導かれます。AIが判事と2人の証人を、問いに合わせて読み解きます。
- 砂に印をつける代わりに、点の数を乱数で決めています。
- 図形の並べ方と意味は、中世ヨーロッパに伝わったジオマンシー(盾形の配置)によります。アラブ世界の砂占いとは、図形の名前や読み方が異なるところがあります。
参考文献
- Stephen Skinner, “Terrestrial Astrology: Divination by Geomancy” (Routledge & Kegan Paul, 1980)
- Emilie Savage-Smith and Marion B. Smith, “Islamic Geomancy and a Thirteenth-Century Divinatory Device” (Undena Publications, 1980)
- John Michael Greer, “The Art and Practice of Geomancy” (Weiser Books, 2009)
- The British Museum「divination equipment(museum number 1888,0526.1)」 https://www.britishmuseum.org/collection/object/W_1888-0526-1
最終更新:2026-10-08