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マルセイユ石けん大きな釜で炊く南仏の石けん

南フランスのマルセイユとその周辺で、植物の油を大きな釜で炊いて作られてきた石けんです。1688年の王の勅令、「72%」の刻印の由来、今も釜で炊き続ける石けん工房を紹介します。

フランス・マルセイユとその周辺(プロヴァンス)14世紀〜入浴今も続いている

概要

マルセイユ石けんは、南フランスの港町マルセイユとその周りで作られてきた石けんです。植物の油を大きな釜で何日もかけて炊き、乾かして四角く切り出します。表面に「72%」「EXTRA PUR(エクストラ・ピュール)」などの文字が刻まれた、立方体の姿でよく知られています。

色はおもに2つあります。オリーブの油で作る緑色のものと、ヤシの油などで作るベージュ色のものです。体を洗うのにも、洗濯にも使われてきました。

歴史

マルセイユでは、中世から石けんが作られていました。公証人の記録に「石けん職人」として最初に名前が出てくるのは、1371年のクレスカス・ダヴァンという人物とされます。近くには、オリーブの油、海辺の植物を焼いて作るソーダ、カマルグの塩と、原料がそろっていました。

1688年10月5日、ルイ14世の時代に、プロヴァンスでの石けんづくりの決まりを定めた勅令が出されました。動物の脂を使うことを禁じ、オリーブの油で作ることを求めたものです。暑さで油が扱いにくい夏の間は、釜を止めるよう定めていたとされます。この勅令は「コルベールの勅令」と呼ばれています。

18世紀にはマルセイユの工房と釜の数が増え、1789年には65の工房に280の釜があったとされます。1812年には、オリーブの油の石けんに、五角形の中に「huile d’olive(オリーブの油)」と作り手の名前、マルセイユの名を入れた印を付けることが、ナポレオンの政令で定められました。

18〜19世紀になると、当時の植民地などから港に届くヤシ、ピーナッツ、ゴマなどの油も使われるようになりました。ベージュ色の洗濯用の石けんは、こうして広まりました。20世紀の初めには、マルセイユに約100の石けん工房があったといいます。

作り方・使い方

昔ながらの作り方は「マルセイユ製法」と呼ばれ、釜の中で次の5つの工程を進めます。

  1. 油と、水酸化ナトリウムを溶かした液を混ぜて煮立てる
  2. 塩水を加えて、石けんと余分な液を分ける
  3. さらに炊いて、油をすべて石けんに変える
  4. 液で洗い、グリセリンや不純物を取り除く
  5. 水を加えて、なめらかな状態に整える

工程は1週間から10日ほどかかります。釜の火加減や石けんの状態は、親方の職人が見極めます。炊き上がった石けんは「ミーズ」と呼ばれる床の囲いに流して乾かし、切り分けてから刻印を押します。

油の量は、工房の団体の決まりでは、釜に入れる材料全体のおよそ72%とされています。また、フランスのリヨンの絹織物の職人は、生糸を加工する工程で、オリーブの油の石けんを削ったものを使ってきたといいます。

今の暮らしの中で

20世紀の後半、合成洗剤が広まると、マルセイユの工房は次々に閉じました。工房の団体によると、今も釜で石けんを炊いている工房は、マルセイユの「フェール・ア・シュヴァル」「ル・セライユ」「サヴォヌリー・デュ・ミディ」と、サロン=ド=プロヴァンスの「マリウス・ファーブル」の4つです。4社は「マルセイユ石けん製造者連合(UPSM)」をつくり、共通のロゴを石けんや箱に入れています。

一方で「マルセイユ石けん」という名前は、1927〜1928年の裁判で、産地ではなく品の種類を表す名前とされました。そのため、どこで作られた石けんにもこの名前を付けることができます。UPSM は地理的表示(IG)として名前を守る申請を続けていますが、2026年の時点では、まだ認められていないと報じられています。輸出先としては、日本も大きな買い手の一つとされます。

よくある誤解・豆知識

「72%」は1688年の勅令の数字ではありません。 勅令が決めたのは油の種類です。「72%の油」という表示は、1906年に化学者フランソワ・メルクランが油の量の目安を定めたことに始まると、工房などが伝えています。石けんに水を多く混ぜてかさ増しする不正を防ぐためだったとされます。

「コルベールの勅令」とはいえ、コルベール本人は勅令の5年前の1683年に亡くなっています。 出されたのは、息子のセニュレー侯が父の役目の一部を継いでいた時期とされます。

石けんづくりには強いアルカリを使います。 原料の水酸化ナトリウムは、日本では濃いものが劇物に指定されていて、皮膚や目に付くと危険です。工房では、職人が管理して扱っています。

参考文献

最終更新:2026-10-11

このページは、世界の装いと美容の品を、歴史と文化として紹介するものです。医療上の効果や、美容上の効果を保証するものではありません。肌に合わないときは使用をやめ、気になることは医師や薬剤師に相談してください。民族や信仰にかかわる装いは、その意味を尊重して紹介しています。

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