ツィテ占い赤い豆で日を数える
「日の守り手」と呼ばれる占い師が、ツィテの木の赤い種を数えながら260日暦の日をたどり、答えを読むグアテマラ高地のマヤの人々の占い。現在も受け継がれています。
発祥:グアテマラ(キチェ・マヤなど)古くから現在まで儀礼解説のみ
概要
ツィテ占いは、グアテマラの高地に暮らすキチェなどのマヤの人々に伝わる占いです。「アフキーフ(ajq’ij)」と呼ばれる人々が、ツィテという木の赤い種を使い、260日の暦をたどりながら相談ごとへの答えを読み取ります。
アフキーフは、キチェ語で「日の人」といった意味をもつ言葉で、日本語では「日の守り手」と訳されることがあります。暦を数え続け、祈りや儀礼を行い、人々の相談に応じる宗教的な役割を担っています。
今も生きる260日暦
古代マヤの260日暦は、遺跡の中だけのものではありません。グアテマラの高地では、今もこの暦が数えられ続けています。
この暦は、20の日の名前と1から13までの数字を組み合わせて、260日で一巡りします。それぞれの日には固有の性格があると考えられ、儀礼の日取りや、生まれた日による人の性格を考えるときにも使われます。
ツィテの赤い種
ツィテは、デイゴの仲間(エリスリナ属)の木です。人類学者アレン・クリステンソンは、その種を豆のような形をした鮮やかな赤い種と説明しています。日の守り手は、この種や、ときにトウモロコシの粒を占いに使います。
マヤの神話を記した16世紀の書物『ポポル・ヴフ』にも、トウモロコシの粒とツィテを使った占いが登場します。人間をつくろうとする神々に頼まれて、老いた夫婦の神シュピヤコックとシュムカネーが、トウモロコシの粒とツィテを使って占う場面です。クリステンソンは、この場面を現代の日の守り手の占いと結びつけて説明しています。
仕組み
アメリカの人類学者バーバラ・テドロックは、1970年代にグアテマラのモモステナンゴで日の守り手のもとで学び、その占いを詳しく記録しました。
占いでは、日の守り手が祈りの言葉を唱えてから種をいくつかの山に分け、山を一つずつ数えながら260日暦の日の名前を順にたどっていくとされます。行き着いた日の名前とその性格が、問いへの答えを考える手がかりになります。
テドロックは、日の守り手が自分の体の中に感じる「血の動き」も、答えを読むための大切な手がかりとされていることを報告しています。つまり、この占いは数を数えるだけの作業ではなく、日の守り手の経験と感覚によって解釈されるものなのです。
共同体の中の占い
日の守り手は、子どもの誕生や結婚、病気、儀式の日取りなど、共同体の暮らしのさまざまな場面で相談を受けます。日の守り手になるには、長い年月をかけて師のもとで学ぶ必要があるとされます。
グアテマラでは20世紀後半の内戦の時代に、マヤの人々が大きな被害を受けました。テドロックは1989年に再びモモステナンゴを訪れ、そうした困難の中でも暦と信仰が力強く守られていたと記しています。
ツィテ占いは、現在も続く先住民の信仰と儀礼です。そのため、このサイトでは文化的な背景の紹介にとどめ、体験は提供していません。
よくある誤解・豆知識
マヤの暦というと、「2012年に世界が終わる」という話を思い出す人もいるかもしれません。しかし、これは長い期間を数える別の暦(長期暦)の区切りをめぐる誤解で、マヤの人々の伝統的な考えとは異なります。260日暦は今も日々の暮らしの中で使われ続けています。
参考文献
- Barbara Tedlock, “Time and the Highland Maya” (University of New Mexico Press, 1982; revised edition 1992)
- Allen J. Christenson, “Popol Vuh: The Sacred Book of the Maya” (University of Oklahoma Press, 2007)
- Multepal(University of Virginia)「Tz’ite’」 https://multepal.spanitalport.virginia.edu/node/3119
最終更新:2026-10-08