オガム占い古代アイルランドの文字
古代アイルランドで使われた、線を刻んで表すオガム文字を使う占い。それぞれの文字に木の名前が結びつけられています。文字は古代のものですが、占いとしての使い方は主に現代に生まれたものです。
発祥:アイルランド文字は4〜6世紀ごろ、占いは現代カード等を引く体験できる
オガムを引く
概要
オガムは、古代アイルランドで生まれた文字です。もともとは人の名前などを石に刻むための文字で、占いの道具ではありませんでした。
現在「オガム占い」と呼ばれているものは、オガムの文字を木の札や棒に刻み、それを引いて答えを読む方法です。各文字に結びつけられた木の性質をもとに解釈します。ただし、この占いの形は主に20世紀以降に作られたものだと考えられています。このページでは、古代の文字としてのオガムと、現代の占いとしてのオガムを分けて紹介します。
文字としてのオガム
オガムの最も古い碑文は、4世紀ごろのものとされます。ブリタニカ百科事典によると、知られている碑文は375以上あり、そのうち約300がアイルランドで見つかっています。特に南西部のケリー州やコーク州に多く、ウェールズやスコットランド、マン島などにも残っています。
オガムは、1本の基準線に短い線や刻み目を入れて音を表します。石の柱では、柱の角が基準線の役目をしました。基本の文字は20個で、5文字ずつ4つのグループに分かれます。1本から5本までの線を、基準線の片側、反対側、線をまたぐ斜めの形、線の上の刻み目に分けて区別します。のちに、5つの追加の文字も加わりました。
石に刻まれた内容は短く、ほとんどが「〇〇の息子の××」といった人名です。それでも、アイルランド語の古い姿を伝える貴重な資料になっています。オガムがどのように生まれたかについては、ラテン文字をもとに考え出されたとする説などがあり、学者の間で議論が続いています。
木の名前との結びつき
中世のアイルランドでは、学者たちがオガムについての解説書を書きました。14世紀末の写本『バリーモートの書』には、オガムを説明する文章が収められています。
こうした中世の解説では、各文字の名前が木の名前と結びつけられました。たとえば最初の文字「ベイス」はカバノキ、「ドゥイル(ダウ)」はオーク、「コル」はハシバミを意味します。このため、オガムは「木のアルファベット」とも呼ばれます。
ただし、研究者マクマナスらは、本当に木を意味する文字の名前は多くても8つほどだと指摘しています。たとえば「ルイス」はナナカマドと説明されてきましたが、もとは別の意味だったと考えられています。「すべての文字が木の名前」という考えは、中世の学者による後からの解釈だという見方が強いのです。
現代の占いとしてのオガム
オガムを占いに使う方法を広めるうえで大きな影響を与えたのが、イギリスの詩人ロバート・グレーヴズの『白い女神』(1948年)です。グレーヴズはオガムの文字を木や暦と結びつける独自の考えを示しましたが、この考えは現在の研究では支持されていません。
現代のオガム占いでは、20個または25個の文字を木の棒や札に刻みます。それを袋から引いたり、布の上に投げたりして、出た文字と木のイメージから答えを読みます。ケルト文化への関心の高まりとともに、20世紀後半から広まりました。
よくある誤解・豆知識
「古代のドルイド(神官)がオガムで占っていた」と紹介されることがあります。中世の物語『エーダインへの求婚』には、ドルイドがイチイの木の棒にオガムを刻んで、行方不明の人の居場所を探る場面があります。しかし、どのように使ったかは書かれておらず、物語の場面でもあります。実際に古代の占いが行われていた確かな証拠とはいえません。
北欧の文字を使う占いには「ルーン占い」があります。こちらも、文字そのものの歴史と、現代の占いとしての使い方を分けて考える必要があります。
参考文献
- Encyclopaedia Britannica「ogham writing」 https://www.britannica.com/topic/ogham-writing
- Damian McManus, “A Guide to Ogam” (An Sagart, 1991)
- Robert Graves, “The White Goddess” (Faber and Faber, 1948)
- Wikipedia(英語版)「Ogham」 https://en.wikipedia.org/wiki/Ogham
最終更新:2026-10-08