子どもが学校をそうじする日本の学校の毎日のそうじ当番
日本の多くの学校では、子どもたちが毎日、自分たちの教室や廊下をそうじします。明治時代から続き、今の小学校の学習指導要領にも「清掃などの当番活動」と書かれています。歴史、そうじの時間の様子、海外での受け止められ方を紹介します。
日本(全国の小学校・中学校・高校)明治時代〜そうじ今も続いている
概要
日本の多くの学校では、子どもたちが毎日、自分たちの教室や廊下、階段などをそうじします。学級をいくつかの班に分け、班ごとにそうじする場所を受け持つのがふつうです。そうじの時間は、昼休みの前後や放課後などに、学校ごとに決められています。
小学校の学習指導要領は、学級活動の内容の一つに「清掃などの当番活動」を挙げています。百科事典『日本大百科全書』は、子どもによる学校掃除を「日本の教育の伝統的な特色」と説明しています。
歴史
子どもが学び舎をそうじする習わしは、江戸時代の寺子屋や、中世の寺での教育にさかのぼるとされます。寺子屋の決まりを記した掟書などから、一部の寺子屋で子どもがそうじをしていたことがわかっています。その背景に、寺での修行としての掃除や、けがれを嫌う考え方を挙げる説明もあります。
明治時代の初めは、学校を清潔に保つのは先生の務めとされていました。1873年(明治6年)に東京師範学校が作った「小学校教師の心得」にも、そう書かれています。けれども、学校に通う子どもが増える一方で、そうじをする人を雇うお金が足りませんでした。それが、子どもが学校をそうじするようになった理由の一つだといわれます。1906年(明治39年)に文部省が出した学校の清潔についての通知は、子どもがそうじをすることを前提にしていました。
1913年(大正2年)には、香川県の知事が子どもによる学校掃除を禁じたことをきっかけに、その是非が新聞や教育雑誌で議論されました。
戦後の学習指導要領は、1958年(昭和33年)に「教室内外の整とんや美化」に触れました。ただ、子どもが学校をそうじすることを、はっきり書いてはいませんでした。小学校の学習指導要領に「清掃などの当番活動」と書かれたのは、2008年(平成20年)のことです。
やり方と道具
そうじには、ほうき、ちりとり、雑巾、バケツなどを使います。場所に合わせて道具を工夫するよう、そうじ担当の先生が指導している学校もあります。
研究者が2020年に訪ねた愛媛県のある小学校では、給食の後に予鈴が鳴ると、子どもたちがそれぞれの持ち場に集まりました。1年生から6年生までをまぜた班で、15分間そうじをします。教室では机を動かし、膝をついて床に雑巾をかけていました。終わると、班ごとに短い反省会を開いていました。
おしゃべりをせずにそうじをする学校もあります。「無言清掃」「もくもく掃除」などと呼ばれ、1970年代の半ばごろから各地に広まったとされます。どのような経緯で広まったのかは、よくわかっていません。
ふだんのそうじに加えて、学期ごとなどに大掃除もします。文部科学省の学校環境衛生基準では、大掃除が定期的に行われているかを、毎年3回確かめることになっています。
今の暮らしの中で
今の小学校の学習指導要領(2017年告示)は、そうじなどの当番活動で自分の役割を自覚し、協力して働くことの意義を理解することを、学級活動の内容としています。学校行事の「勤労生産・奉仕的行事」の例としても、校内の美化や、地域や公共施設のそうじが挙げられています。
海外の学校では、そうじを専門の職員が受け持つ国も多くあります。1970年代の研究では、世界の学校を、職員がそうじする国、職員と子どもの両方がする国、子どもがする国の3つに分けました。日本は、子どもがする国に入ります。
日本の学校のやり方を取り入れた国もあります。エジプトでは2018年9月に「エジプト日本学校」35校が開校し、学級会や日直とともに、そうじを取り入れました。シンガポールの教育省は2024年の議会への答弁で、子どもたちが毎日、教室や校内の共用の場所をそうじしていると説明しています。
子どもに学校をそうじさせることには、大正時代から賛否の議論があります。今も、無言清掃などをめぐって、新聞や本でさまざまな意見が出されています。
よくある誤解・豆知識
中学校の学習指導要領には「清掃」の当番は書かれていません。 小学校とは違い、中学校・高校の学習指導要領には、子どもによる学校掃除がはっきりとは書かれていません。それでも、多くの学校で毎日のそうじが行われています。
そうじの時間は授業の時間に数えません。 学習指導要領の解説は、全校で分担して行うそうじの時間を、決められた授業の時間数に含めないとしています。
家庭科でもそうじを学びます。 小学校の家庭科では、住まいの整理・整頓やそうじの仕方を学びます。学校のそうじとは別の、家庭の仕事としての学びです。
参考文献
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」 https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_01.pdf
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」 https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_02.pdf
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編」 https://www.mext.go.jp/content/20221213-mxt_kyoiku02-100002607_014.pdf
- 文部科学省「学校環境衛生管理マニュアル『学校環境衛生基準』の理論と実践【平成30年度改訂版】」 https://www.mext.go.jp/content/20230817-mext_kenshoku-100000613_2.pdf
- 表真美「学校清掃の現状と課題:黙って掃除を行う指導に注目して」『京都女子大学教職支援センター研究紀要』4号、2022年 http://hdl.handle.net/11173/3480
- コトバンク「学校掃除」(日本大百科全書、沖原豊) https://kotobank.jp/word/学校掃除-1521851
- JICA「日本式教育をエジプトへ本格導入『エジプト日本学校』35校が開校」mundi 2018年11月号 https://www.jica.go.jp/information/publication/magazine/mundi/1811/201811_15.html
- Ministry of Education, Singapore「Adopting certain aspects of the Japanese school lunch programme」議会答弁、2024年11月13日 https://www.moe.gov.sg/news/parliamentary-replies/20241114-adopting-certain-aspects-of-the-japanese-school-lunch-programme
最終更新:2026-10-19
このページは、世界のそうじと洗濯の習わしを、歴史と文化として紹介するものです。昔の洗い方には、今では危ないとされる材料を使ったものもあります。まねをするときは、洗剤や道具の表示に従ってください。