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フッロニカ古代ローマの洗濯と布の仕上げ屋

古代ローマの町で、衣服を洗い、織り上がった布を仕上げた仕事場。桶の中で布を足で踏み、人や動物の尿や粘土を洗剤に使い、硫黄の煙で白くさらしました。ポンペイやオスティアに残る遺構と、壁画や文献からわかる洗い方を紹介します。

古代ローマ(イタリア・ポンペイ、オスティアなど)古代ローマ(ポンペイの遺構は79年の噴火のころ)洗濯昔の習わし

概要

フッロニカ(fullonica)は、古代ローマの町にあった、衣服を洗い、新しく織り上がった布を仕上げる仕事場です。働く人は「フッロ(fullo)」と呼ばれました。羊毛の服や布の汚れを落とし、白く、きれいに整えるのが仕事でした。

洗剤には、人や動物の尿や、「クレタ・フッロニカ(洗い屋の土)」と呼ばれる粘土が使われました。白い布は、硫黄を燃やした煙でさらして仕上げました。79年の噴火で埋まったポンペイや、港町オスティアの遺跡に、その仕事場の跡が残っています。

歴史

ポンペイの「ステファヌスの洗濯屋」は、町の最後の時期に、住宅を作りかえて開かれた店です。ポンペイ遺跡公園の説明では、中庭の雨水をためる池を大きな水槽に、屋根の明かり取りを変えて屋上を干し場にしたとされます。選挙の落書きから、持ち主はステファヌスという人物だったと考えられています。遺跡は1912〜13年に掘り出されました。

洗濯屋たちは、町の中で一つの職業の仲間を作っていました。ポンペイの中心の広場に面した大きな建物を建てた女性エウマキアには、洗濯屋たちが像を捧げています。像の台座には、洗濯屋たちが贈ったことが刻まれています。港町オスティアでは、小さな店から大きな仕事場まで6軒の洗濯屋が知られ、3世紀の碑文には、洗濯屋の組合の名簿が刻まれています。

尿は、洗濯屋にとって大切な材料でした。ポンペイでは、道に置いた壺で尿を集めたとされます。ローマの歴史家スエトニウスは、皇帝ウェスパシアヌス(在位69〜79年)が公衆便所に税をかけた話を伝えています。息子ティトゥスにとがめられた皇帝は、最初に入った税の硬貨を息子の鼻に近づけ、においがするかとたずねました。息子が「いいえ」と答えると、「それでも尿から出たものだ」と言ったといいます。

やり方と道具

洗濯屋の仕事は、いくつもの手順に分かれていました。

  1. 浸して踏む 布を洗剤の液に浸し、低い壁に囲まれた桶の中に入れて、足で何時間も踏みました。桶には、大きなかめを半分に切ったものなどが使われました。哲学者セネカは、この動きを「洗濯屋の跳躍」と書いています。
  2. すすぐ 踏み終わった布は、水槽に戻して洗剤を落としました。
  3. 毛羽を起こす ポンペイの洗濯屋の柱に描かれた絵には、アザミの仲間の植物で布の表面をこする人の姿があります。
  4. 白くさらす 白い布は、丸い籠のような枠にかぶせ、その下で硫黄を燃やして煙でさらしました。同じ柱の絵には、この籠を肩にかついで運ぶ人も描かれています。色の布は、粘土でこすって仕上げたとされます。
  5. 押して整える 仕上げには、2本のねじで締める大きな木の押し機が使われました。

ポンペイ遺跡公園によると、ステファヌスの洗濯屋で働いた人のほとんどは奴隷でした。尿のにおいの中での長い仕事でした。

なお、尿から出るアンモニアや、硫黄を燃やして出る二酸化硫黄は、吸いこむと体を傷めることのある気体です。研究者のブラッドリーは、洗剤にくり返し触れた働き手の肌や肺が傷んだだろうと述べています。今の洗濯でまねをするものではありません。

今の暮らしの中で

ローマの洗濯屋の仕事は、今は遺跡や博物館で知ることができます。ポンペイの遺跡ではステファヌスの洗濯屋の水槽を、オスティアの遺跡では足踏みの桶が並ぶ跡を見ることができます。ナポリ国立考古学博物館には、ポンペイの洗濯屋の柱の絵が収められています。

英語では、布の仕上げをする職人を fuller、洗剤に使われた粘土を fuller’s earth といいます。どちらもラテン語の fullo にさかのぼる言葉です。

よくある誤解・豆知識

洗濯だけの店ではありません。 フッロニカは、着古した服を洗うだけでなく、織り上がったばかりの羊毛の布の脂を落とし、仕上げる仕事もしていました。

「お金はにおわない」の元の話です。 ウェスパシアヌス帝が税の硬貨を息子に嗅がせた話は、「お金の出どころは問わない」という意味の、ラテン語の言い回しの元になったとされます。

洗濯屋は裕福なこともありました。 においの強い仕事として見下されることもありましたが、町の中でよく稼ぐ職人だったという見方もあります。

参考文献

最終更新:2026-10-17

このページは、世界のそうじと洗濯の習わしを、歴史と文化として紹介するものです。昔の洗い方には、今では危ないとされる材料を使ったものもあります。まねをするときは、洗剤や道具の表示に従ってください。

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